キッカケ

「あんた、髪の手入れくらいしたら?」

「?何かおかしいデスカ?」

「おかしくないと、思ってるわけ?センパイ。」

「・・・・・・・・?どこが?」

高校一年の一学期までは、一応まともに高校生をしていた俺様は、
理事長に目をつけられ、この学園初の飛び級審査に合格し、
現在大学一年なわけだが、
その一学期の間、運動部に引っ張りダコだという、体力馬鹿をからかおうと
ちょっかい出せば
「確かに、俺は勉学は苦手な体力馬鹿だが、一応センパイだ。せめて”センパイ”と呼べ。」
と言われ、嫌味半分で呼んでいた”センパイ”という呼称が、いつしか
この人のみに当てられるようになっていた。

赤い髪を持つ、体力馬鹿。
ギロロセンパイ。に。

「・・・それから、もう貴様のほうが上なんだから”センパイ”なんて呼ばなくてもいい。」
と、ため息交じりに言う、この人の顔に、悔しさは一片も無い。

「そー言っても、クセになっちまってるからなぁ・・・・それとも甘い声で”ギロロ”とか呼んで欲しいわけ?」

と嘲笑すれば

「できれば縁を切って欲しい。」

と真顔で言われた。

その一言に傷ついた自分に驚いた。

それが自覚したキッカケ。